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乱読乱文多謝 静岡史跡探訪ver.

スーパーカブと、史跡と、ときどき読書感想文

日々の出来事 9

ロダン

 我を過ぐれば憂ひの都あり、我を過ぐれば永遠(とこしへ)の苦患(なやみ)あり、我 を過ぐれば滅亡(ほろび)の民あり

 義は尊きわが造り主を動かし、聖なる威力(ちから)、比類(たぐひ)なき智慧、第一の愛我を造れり

 永遠の物のほか物として我よりさきに造られしはなし、しかしてわれ永遠に立つ、汝等ここに入るもの一切の望みを棄てよ



 新年のご挨拶にしては、少々不吉に過ぎました。もうしわけありません。そして、明けましておめでとうございます。今年も、いろいろと訳のわからない文章を書きなぐっていくつもりでおりますので、よろしくおねがいいたします。

 で、上の重々しい詩句は、謂わずと知れた、ダンテ、『神曲 地獄編』第三曲冒頭の、「地獄の門」の碑文である(訳は山川丙三郎による)。そういえばプーシキンは、その『オネーギン』のなかで、この「一切の望みを棄てよ」の一文を美女たちの額に見出して逃げ出した、みたいなことを書いていたが、まあそれはそれとして、どうしてまた、いきなりこんなものを持ってきたのかといえば、昨年末に、私は久しぶりに美術館にいって、ロダンの『地獄の門』を観てきたので、そのことを書いてみようと思ったのだ。

 静岡県立美術館は、静岡市駿河区南部の、清水区(旧清水市)との境に近い辺りにある。
小高い丘の上で、静岡県立大学や、図書館などと隣接した、なかなか雰囲気のある場所にあり、その周辺を散歩するだけでも楽しめそうな感じだ。



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 駐車場から美術館へ向う歩道。彫刻やオブジェなども点在し、芸術を楽しもうという演出がなされている。



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 美術館正面。

 この美術館には、「ロダン館」という施設があり、ロダンの作品を常設で展示しているのだ。今回はその「ロダン館」が目的だったので、他は観ずに、まっすぐそちらに向う。観覧料は、「ロダン館」だけならば300円である。安い!



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 「ロダン館」に入ると、いきなり正面に『地獄の門』があらわれる。この日は、何やらチェロの演奏会らしきもののの準備をしていたらしく、舞台だの椅子だのが並んでいた。

 ところで、あ、美術館内で写真なんか撮っちゃって悪いヤツだ、と思われた方もおられるかもしれないが、この「ロダン館」では、何と写真撮影が許されているのである。ただ勿論、フラッシュ撮影や、携帯電話での撮影は許可されないし、また、撮影のために他の人の鑑賞を邪魔したりなんかしてはいけない。



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 『地獄の門』上部。わかりにくいかもしれないが、中央部に、『考える人』がみえる。この有名な像の、本来あるべき姿だ。



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 単体の像もある。この、自身の内へと集中する力の塊のようでありながら、観るものを圧倒するような存在感を周囲にみなぎらせる銅像は、ぜひ、機会があれば間近に観ていただきたい。あまりに有名なので、何だか知った気になってしまいがちだが、やはり、写真でみただけでは、こういう美術作品というものを本当に知ることはできないのだと思い知らされる。

 また、『地獄の門』の他の部分も、単体の像として幾つか展示されている。例えば『パオロとフランチェスカ』がそうだが、この、『神曲』のなかでも印象深い、そして多くの芸術家たちにインスピレーションを与え続けてきたエピソードに基づいて生み出された像を、私は観ることに夢中になりすぎて、何と、撮影するのを忘れてしまった。残念。また、次の機会に・・・。


 
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 『花子のマスク』。1906年のマルセイユ、舞台女優花子こと太田久子の演技をみたロダンは感銘を受け、彼女にモデルを依頼した、とのこと。



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 『《ラ・フランス》習作』。私にはなんだか、宮崎駿のアニメに出てくるキャラクターのようにみえた。ナウシカとか。

 芸術家の像もある。



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 『ボードレールの頭部』。私のイメージのなかのボードレールとは、ちょっと遠い。子どもっぽくみえませんか? あるいは、ごく若い頃のボードレールなのかもしれない。



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 『バルザックの頭部』と『裸のバルザック』。これは、ちゃんと頭が胴体の上に乗っかって、服も着た『バルザック像』のための、いわば習作とでもいったもの。しかし、私はこのふたつの像がとても好きだ。バルザック、というよりは、私のなかの「ツァラツストラ」のイメージにぴったりなのである。特に『頭部』には、なみなみならぬ強い意志を感じる。

 『カレーの市民』関係の単体像もある。



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 このシリーズは特に、手が、印象的だ。よくみると、人物の身体の大きさに比して、手が大きすぎるのだが、それがまさに真実味を生んでいることは私のような素人にもわかる。こうした造形美術の妙というものを、ロダンの作品ははっきりと感じることができる。

 実は私には、この『カレーの市民』にまつわる思い出がある。まだ「ロダン館」ができる前のこと(開館は、1994年である)、この静岡県立美術館に初めてやってきたロダンの作品である『カレーの市民』は、まず入り口近くのエントランスに展示された。たしか、三体ぐらいだったと記憶しているが、その内の一体の設置作業に、なんと、私は参加したのである。

 当時私は、ある大手運送会社に勤めていたのであるが、そこの美術品輸送部門で、人手が足りない、とのことで手伝いにかり出されたのだった。普段は手を触れることのできない銅像に、手袋はしていたがベタベタ触ることができた。そういえば別の機会には、浜松の美術館で、セザンヌの小振りな絵を一人で持ったことがあった。その展覧会の目玉作品のひとつとして来日した絵であり、ガラスで保護された狭いスペースに運び込むために、一人で持たざるを得なかったのだが、幾らぐらいかと美術館のひとに聞いてみたら、値段はつけられないだろうといわれた。そりゃそうだね。このときにはさすがに手が震えた。

 帰りがけに、館内の売店に寄る。収蔵作品についての解説だとかが載った冊子を購入。そのとき、ショーケースのなかに、ロダン作品のミニチュアが売られているのを発見。『考える人』と、『接吻』。これらもよかったが、もうひとつ、『ダナイード』があった。

 『ダナイード』は、銅像ではなく、大理石像で、残念ながらこの美術館に収蔵されてはいないのだが、この「ロダン館」がオープンしたばかりの頃、ロダンの特別展示のイベントがあり、そのときに来日していたのを観たことがあった。それ以前に、リルケのロダン論を読んでいたこともあって、私はこの像に非常な感銘を受けたのであった。

 ロダンの銅像のごつごつとした質感や力強さとはまた違った、女性的ななめらかさのなかに、終わりのない悲しみ、苦しみに、うちひしがれた戦きのごときものを、その像は雄弁に物語っていた。そのミニチュアが、売られていたのである。

 ほしい。しかし、4000円もするのだ。貧乏な私は諦め、しかし大いに後ろ髪を引っ張りまわされながらも、美術館を後にしたのだった。

 思えば、『神曲』を読んだのも、リルケのロダン論を読んだのも、もう二十年も前の話になってしまっていた。これらを読み直してから、また観にいきたいと思う。『フランチェスカ』の写真も撮りたいし、次にいくときまでには、我が家の経済状態を少しは改善させ、ぜひとも、『ダナイード』を手に入れたい。・・・あ、プラレールの「165系東海型急行列車」も、まだ諦めた訳ではありませんよ。



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コメント


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謹んで、新春のお慶びを申し上げます。
昨年は、からくり童子 風のジードをご訪問頂き、誠に有難う御座いました。
本年も、変わらぬご愛顧を宜しくお願いいたします。

からくりオム

からくりオム | URL | 2012-01-02(Mon)23:18 [編集]


明けましておめでとうございます!
へぇ~!静麿さん、文学だけでなく芸術作品にも詳しいのですね!!
オレなんかその良さがまったく理解できないから困ったものです。
それでも、知ったかぶりをするために、平山郁夫美術館なんぞにシゲシゲ通ったりするんですけどね・・

そんなわけで、今年も貴ブログの更新を楽しみにしております!

銀蔵 | URL | 2012-01-03(Tue)15:37 [編集]


今年もよろしくお願いいたします

ロダン館、素敵ですね~
そんなにすごいのに、たった300円!!
都会は違いますね。羨ましい。

恥ずかしながら、「考える人」が、
大きな造形物の一部分だったことを初めて知りました。

撮影は可能だけれど、触ることはできないのでしょうね?
触りたくなりそうです。
手の大きさ、確かめてみたい!

では、今年も、刺激的な話題を楽しみにしております♪

こうまさん | URL | 2012-01-03(Tue)21:12 [編集]


Re:からくりオム さん

からくりオム さん、
あけましておめでとうございます。

こちらこそ、常々のご訪問、ありがとうございます。
今年もよろしくおねがいいいたします。

静磨 | URL | 2012-01-03(Tue)23:33 [編集]


Re: 銀蔵さん

銀蔵さん、あけましておめでとうございます。

いや、正直にいいます。私も知ったかぶりですよ(笑)
好きな作家の本で、たまたまロダンを知り、そしてたまたま、地元にロダンを展示する美術館があったと、それだけの話だったりします。
だから、他の彫刻家だの画家だのの作品について何か書け、といわれても、ちょっと困ってしまいます(笑)

では、私のほうこそ今年もまた、銀蔵さんの面白くてためになるブログを楽しませていただきます。
ありがとうございました。

静磨 | URL | 2012-01-03(Tue)23:44 [編集]


Re: こうまさん

こうまさん、あけましておめでとうございます。

300円は、確かに素晴らしく安いですね。
ただ、静岡は田舎ですよ。この美術館、本文では見栄を張って「小高い丘の上」なんて書いてしまいましたが、「山のなか」にあると書いた方が、本当はより正確だと思われます(笑)

触るのは、さすがに禁止です、残念ですが。
ただ、やはり触りたくなっちゃいますよ。その質感を確かめたくなる、とでもいうんですかね。
そういう「真実味」みたいなものを、私のような素人にも感じさせる作品だ、ということなのでしょう。

コメントありがとうございました。
今年もよろしくお願いいたします。

静磨 | URL | 2012-01-03(Tue)23:55 [編集]


あけましておめでとうございます。
ことしも、ふらりちょこちょことおじゃまさせていただきます。よろしくお願いします(^_^)/

アートな年明けですね。
私も知った気になっている「考える人」(^^ゞ
ぜひ、機会があれば、生で見てみたいです。

ゆう | URL | 2012-01-06(Fri)23:01 [編集]


Re: ゆうさん

ゆうさん、お返事おくれてすみません。
あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いいたします。

「知った気になっている」ものって、考えてみるとけっこうありますよね。
私もこれからは、なるべく本物を実際にみるようにしたいと思っています。

コメントありがとうございました。
では。

静磨 | URL | 2012-01-08(Sun)09:49 [編集]