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乱読乱文多謝 静岡史跡探訪ver.

スーパーカブと、史跡と、ときどき読書感想文

日々の出来事 6

紅葉とヤマメ

 出掛ける用事のない休日、というものは辛いものだ。家に閉じこもっていれば子どもたちは何だか機嫌が悪くなってくるし、そうなると、妻の「どこかへ連れて行けオーラ」も強くなる。また近所を散歩でも、といってみても、せっかくの休日なのに、といわれるに決まっている。

 こちらは金欠なのだ。金さえかければ楽しめる場所などいくらでもあるが、そうもいかないのだ。だがそこで経済的な事情を主張するのは、自分の稼ぎが悪いことを威張っていうみたいで、これまた体裁のよくない話だ。そこで、金のないヤツは頭を使って、何か暇つぶしを考えなければならない。

 家族のプレッシャーの中、「紅葉をみにいこう」と思いついたのは幸運だった。「どこへ?」と聞く妻に、私は「梅が島」と答える。その山間の温泉地に、私と妻は、上の子がまだお腹のなかにいた頃に一緒に紅葉をみにいったことがあった。案の定、「あ、いいね」との気持ちのいい返事。二人の思い出の場所に、今度は二人の子どもを連れていく。我ながらなかなかの思いつきだ。妻は喜んで準備など始める。

 その様子を横目に、私は内心ほくそ笑む。梅が島。JR静岡駅前から、山に向って伸びていく県道をひたすらに辿っていくと、道がなくなるところで、その温泉郷にたどり着く。距離としては、静岡の中心市街地から車で一時間ちょっとというところか。なかなか由緒ある温泉地であるようで、その昔は武田信玄公の隠し湯であった、などという話もある。が、私にとって大切なのは、無論、そんなことではない。

 大してガソリン代もかからない距離にある、タダで紅葉を楽しめる場所である、ということが大切なのだ。一日遊んでくれば、それで「お出かけしました」という感じも充分得られるし、ホントに、我ながらよい思いつきだと満足しつつ、家族を乗せ、私は車を走らせた。

 平地での紅葉はまだまだだが、さすがに、山間にはいればもう木々は色づいていた。




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 ちょっとまだ時期が早かったかな、と思わせる木もあるが、



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 すっかり紅葉した木もあった。



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 あかや、きいろの・・・



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 散りてなお。

 問題発生。我々はいざ知らず、子どもたちは、紅葉を楽しんだりなどしてはくれない。早々に飽きはじめた。これはいかん、まだ帰るには早すぎる。そこで思い出したのは、ある施設だった。そこでは釣りが楽しめるのだが、妻と二人で来たときには、雨が降り始めてしまってできなかったのだ。よし、とそこへ向うことにした。



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 看板には出ていないが、「魚魚の里」と書いて「ととのさと」と読むこの施設(多分市営の、だと思うけれど?)では、池で養殖のヤマメ釣りが楽しめる。余談だが、以前にも書いた通り我が家では「とと」といえばそれは「トトロ」のことであり、では「魚」の幼児語は、というと、なぜか「たいたい」ということになっている。なのでこういう場合、ちょっとややこしいことになる。自分たちで話をしていて、「魚」なんだか「トトロ」なんだか、わからなくなってしまうのだ。



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 ひとり1500円で、四匹までお持ち帰り可。・・・せんごひゃくえん、か。しかしここまで来て、「高いからやめた」ともいえず、受付をすませ、竿とえさとバケツをもらう。よし、こうなりゃ夕飯のおかずを釣って帰るぞと、意気込んで釣り糸を垂れる。



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 なんだかこちらはにぎやかなので、



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 私はこっちで釣った。しかし、なんでみんなあっちにばかり行くのだろう。まさか、こっちは釣れないのか? 魚はいっぱいいるようだが、などと思っていると、あれよあれよという間に、四匹、釣れてしまった。



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 一番の大物。ヤマメは、本当に美しい魚だ。

 釣った魚を、その場で焼いてもくれるが、持ち帰ることもできる。もうこれは夕飯のおかずと決めてしまっていた貧乏家族は、勿論持ち帰ることにしたのだが、そのためにはハラワタを出さなくてはならない。係のオジサンにやってもらうこともできるが、有料。自分でやればタダだよ、といわれれば、自分でやるに決まっている。貧乏夫婦はナイフを片手に流し台に向う。



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 「彼は17歳と4ヶ月・・・ミシンと洋傘との手術台のうえの、不意の出逢いのように美しい」(ロートレアモン『マルドロールの歌』)。

 ふと脈絡もなく、そんな詩句を思い出したり。

 釣りの趣味もなく、普段料理など一切やらない私。魚のハラワタを出したこと、それも、釣りたてほやほやの、ぴちぴちしたヤツの腹を切ったことなどは、本当に久しぶりだった。生き物を殺し、食べるということを、子どもに教えるいい機会、といえばそうかもしれないが、まず自分自身が、その「命を頂く」ということを、改めて実感させられた気がした。

 手にした竿に伝わってきた、釣り針にかかった魚の死に物狂いの抵抗。それはまな板の上にまで、さらにはハラワタを全て抜かれたあとにまで続いた。その生命力は、こんな釣り堀で釣られることではなく、本当ならば川の最上流部の清冽な流れの中で、生き生きと躍動するために・・・などと思っていると、小振りな発砲スチロールの箱をもって、妻がやって来た。

 聞けば、お持ち帰り用に、箱500円、氷50円で売っているのを買ってきたのだそうだ。



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 このとおり。確かに、魚がいたんでしまっては、夕飯のおかずにすることはできない。「生きてる魚をさばくのなんて初めて」だ、などといっていた妻だが、さすがに大学時代にはカブトガニの解剖などをしていた理系女子だ。変な詩句などぶつぶつ唱えてみたり、命がどうこうなどと考えたりしている文系中年男とは違い、冷静に判断し、素早く行動する。

 うむ、よい妻を得たものだ、などと感心しながら帰路についた私だったが、車を運転しながら、ひとり、不得意な暗算など始めた。四匹で1500円。それに箱代500円に、氷50円。まあ、氷代は無視するにしても、結局、ヤマメが一匹500円の計算だ。貧乏な我が家なのに、何と豪勢なおかずになってしまったことだろう。そんなことを助手席の妻につぶやくと、返事はひとこと。

 「でもいいじゃん。楽しかったんだから。」

 妻のいうことはいつでも正しい。



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コメント


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こんにちわ!

とても楽しく読ませていただきました
家族のお出かけ・・子どもが小さい頃は子どもの視点になって一緒に体験するので、どんなことも生き生きと感じられた気がします
読みながらその感覚が蘇ってきました
一緒にお財布を心配しつつお出かけさせていただいた気分・・ほんとに良い休日でしたね!

hasutama | URL | 2011-11-18(Fri)12:05 [編集]


Re: hasutama さん

hasutama さん、こんにちは。

上の子がやっと2歳半ですから、ちょっと釣りは早すぎたかなとも思ったのですが、あの日以来、テレビや本でサカナを眼にするたびに、おもちゃのバケツを持ってきて、私にサカナを釣れといいます。どうやら、2歳児なりに楽しんでくれていたようですね。

ただ、この梅が島という場所、安倍川という川の水源なのですが、この安倍川水系の最大の支流が藁科川であり、その藁科川周辺というのが、あのセシウムが検出されたお茶の産地なのです。
遠く福島原発からやってきた放射性物質が、藁科のお茶だけに降った、と考えるのは不自然だというものでしょう。
あるいは紅葉も、またあるいはヤマメも、と、疑い始めたらキリがありませんが、ただ、疑うべき根拠もまた確かにある、というのが悲しい現実です。
こうした子供の遊び場ひとつとっても、我々の犯した罪の重さというものを、感じずにはいられません。

コメントありがとうございました。

静磨 | URL | 2011-11-18(Fri)14:23 [編集]