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乱読乱文多謝 静岡史跡探訪ver.

スーパーカブと、史跡と、ときどき読書感想文

北街道 その1


 北街道  その1 駿州秋葉寺 




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 正月三日。すなわち、前回蒲原城に行った翌日の、早朝、夜明け間近のJR清水駅前。今回は、だいたいこのJR清水駅とJR静岡駅とを結ぶように、静岡市街地を東西に走る北街道という道を、カブ110で走ってみることにした。

 「史跡めぐり」なんて謳っておきながら、なにゆえこんなドマイナーなローカル街道を走るのか、というと、ちょっと説明が必要かもしれない。




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 A・興津宿  B・江尻宿  C・府中宿

 地図をみて頂きたい。赤い矢印が旧東海道であり、黒い矢印が、今回走る北街道である。

 東海道が、宿場を辿るように続いているのは当然、であろう。しかし江尻宿は、徳川の五街道整備のときに初めて設けられた宿場である由、以前東海道めぐりの途上、江尻宿跡に立ち寄ったときに、現地の掲示物に書かれてあった。

 ということは、それ以前において、例えば興津から駿府へ向かおうというときには、上掲地図の赤矢印を辿る必要はなく、直線的に駿府へ向かう黒矢印のほうが良さそうである。地形的にも、途中草薙神社あたりで緩やかではあっても丘をひとつ越えなければならない赤矢印よりも、黒矢印のほうが平坦で歩きやすい。

 そう、実は北街道は、中世以前の東海道なのである。勿論、街道というものは不断にその道筋を変えるものなのであり、現在の北街道が、古代から中世までずっと東海道であったという訳ではなく、むしろ奈良時代あたりには、近世の東海道に近い方を通っていたことを示す遺跡なども発掘されてはいるようだ。だから江尻宿設置の直前に限ったとしてもすでに、現北街道の全線が東海道であった、とはいえないだろう。歴史的変換、とは、そう杓子定規なものではない。だが少なくとも、北街道が「史跡めぐり」に相応しい古い街道であることは確かなのである。

 ということで、ちょっと強引な理由付けもできたところで、その北街道へ向かうことにしましょう。街道の歴史については、後にもう少し詳しく触れる機会がある、はずですので。




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 駅前から数分の距離にあるこの交差点。ここが、北街道の起点になる……といいたいところだが、実はこの交差点から、もうひとつ左手に行ったところにある「辻三丁目」の交差点が、現在の北街道の起点になるようである。ただ、写真手前から奥に続いている道が旧東海道であり、ここを右折すると北街道、ということで、一応、旧街道の起点としてはここかな、と思ってここをスタート地点としてみました。




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 で、さっきの交差点を右折したところ。ようやく、北街道に入った。ここからひたすら西へ、駿府をめざす訳だ。では、出発。




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 数百メートル走ると、右側に見えてくるのは「駿州秋葉山秋葉寺」の入り口である。早速寄り道。




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 まずは、「福昌院」。そしてその向かいに、




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 「本坊峰本院」。




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 その間を、参道が山の上へと続く。年末にある大祭のときには、この参道から、先ほど走ってきた北街道にまで、ずらりと露店がならび、大変な人出になったものだが……今でもそうなのかな。実は私の母の実家がこのすぐ近所にあり、私が子供の頃には毎年その大祭のときに遊びにきていたのだ。幼い私は、年末にはクリスマスよりもこの祭りを楽しみにしていたものだが、もう行かなくなって三十年にもなる。去年も行かなかった。今年は、子供をつれていってみようかなあ。




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 「榮松院」。




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 その先の石段を登ると見えるこれは、大祭のときに「火渡り」をやるところである。「火渡り」とは、文字通り火の上を裸足で歩いて渡るもので、元々は山伏の荒行の一種であったが、今はたしか一般参加もあったと思う。秋葉山といえば「火伏の神」である、ということで、やはり火にまつわる修行を行うのだろう。




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  そのそば近くのお堂。この辺りにはお祭りのとき以外にも、「おばあちゃんち」に来るたびにやってきて、兄や妹と遊んだものである。




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 山頂はさらに先。この石段を登る。




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 これが、三尺坊大権現を奉る本堂。
 
 秋葉信仰の総本山といえば、浜松市天竜区春野町の「秋葉神社」ということになろうが、この「駿州秋葉山」は神社ではなくお寺である。このあたり、神仏のシンクレティズムがらみの非常にこみいった事情があるのであるが、それはいつか「塩の道」で「秋葉神社」に行ったときのお楽しみということで、ここでは敢えて触れずにおきましょう、長くなるので(笑) ここではこのお寺の由緒書きを転載するだけでご勘弁ください。


 駿府秋葉山 秋葉寺由来

 【創建】
 
 当山は元亀二年(一五七一)十二月十六日天野小四郎景直により開山され火防の守護神として近郷に名高く、古くは宮家、大名家の祈願所として尊宗を得ていた由緒ある寺院であります。


 【沿革】 
 
 戦国時代武田信玄支配の江尻城、等の軍備施設などに相呼応して清水港を一望し江尻に隣接し又東海道に沿える真土山(まつちやま)に遠州より秋葉三尺坊大権現を遷座し、平素は宗教的行事職務をとり有事の際は、武田軍と軍事助力せしめる為に企画された要塞としての開山であります。天正四年武門として再起する希望を棄てた景直は出家を遂げ、名を日光と改め第一世の住職となる。明治の神仏分離令により現在は真言宗醍醐派(京都伏見醍醐寺三宝院)末寺にて真言密教並びに修験道の法流を受け継いでおります。


 【秋葉三尺坊大権現】

 秋葉三尺坊大権現はその縁起によれば、貞実賢固の夫婦が観音に祈誓し一子をもうけ、その子六歳にて出家し十五歳にて阿闍梨となり一頭の白狐に乗り飛行自在の神通力をもって悪事災難を救い特に火防の守護神として名高く全国で信仰されてします。



 このお寺に、信玄が関係していたとは知らなかった……。

 武田信玄の駿河侵攻については、丸子城、蒲原城の記事で扱ったばかりであるが、その始まりは永禄十一年(1568年)十二月であり、蒲原城落城によってこの周辺が武田の支配するところとなったのがその翌年の十二月である。信玄は最初の侵攻のときに駿府(現在の静岡市中心部)の今川館を周囲の町並み諸共焼き払ってしまっている。つまり信玄には今川氏のように駿府を駿河支配の中心とするつもりは最初からなかったということだろう。

 信玄は江尻城に、後に「武田四天王」と呼ばれることになる山県昌景を城主として配置している。このあたり、少なくとも駿府よりは、この江尻周辺を重視しているように思える。やはり海のない甲斐出身の武田氏であるから、ようやく手に入れた港町を目一杯利用しよう、ということだろうか。

 確かに、実利性、ということだけを考えたならば、単にかつての国府の所在地であった、というだけの駿府よりは、東海道もあり川もあり港もありの江尻の方が、断然使い勝手はよさそうである。いずれにせよ駿河支配のための体制整備の一環として、このお寺が開かれたとは、意外な事実であった。

 と、新しい知識も仕入れたところで、次回に続く。


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