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乱読乱文多謝 静岡史跡探訪ver.

スーパーカブと、史跡と、ときどき読書感想文

宇津ノ谷峠 その1


 宇津ノ谷峠 その1・旧東海道 前半


 先日行った興国寺城は、北条早雲旗揚げの地、であった。それは戦国大名「後北条家」の第一歩であり、また、戦国の世の始まりを告げる象徴的な出来事であった。対して今回は、その北条氏の、そして戦国時代の最期にゆかりの地、ということになるかも知れない。

 旧東海道二十番目の宿場、丸子宿から、次の岡部宿の間にある、宇津ノ谷峠。当ブログでは過去に二度も来ている場所ではあるが、ここは奈良・平安時代から現代に至るまで、時代毎に変化し、そのルートを変えてきた峠越えの道が六本、全て通行可能な状態で現存しているという、非常に興味深い場所なのである。ええ、何度でも来ますとも(笑)

 過去にその6ルートの内、「明治のトンネル」、そして「昭和(大正)のトンネル(昭和第一トンネル)」の2ルートについては紹介させて頂いた。そして最も新しいふたつ、即ち「昭和第二トンネル」と「平成トンネル」ルートは、現国道1号線の、それぞれ上り線と下り線であり、まあ、あらたまって紹介するまでもないような、現代的な二車線のトンネルであるから除外すると、残るは古い2ルート、つまり「旧東海道」と「蔦の細道」ということになる。そう、今回は、なんとこの徒歩でしか通行できない峠越えのルートに挑戦することにしたのである。




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 道の駅「宇津ノ谷峠」下り側。ここがスタートとなるので、カブ君とはここでしばしお別れ。……何だか前回の興国寺城といい、「カブで史跡めぐり」と題しておきながら、カブなんか駐車場に置きっぱなしで、あんまり関係ないような気が……いやいや、ここまでカブで来たことに意義があるのだ、としておこう。では、出発。時間は、朝の5時20分。ここから、旧東海道ルートで峠を越えて岡部側へ、そして「蔦の細道」ルートで、違う峠を越えてまたここに戻ってくる、というコースを歩く。心配なのは、この前日に雨が降ったので道がぬかるんでいることと、私の体力が保つかどうか、だ。やっぱりね、運動しないと、特に下半身の衰えが酷いのです。まあ、無理そうだったら途中で引き返せば、なんて出だしから弱気になりつつも、歩き出す。




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 道の駅を出てすぐにあるのが、「蔦の細道」の静岡側登り口。私はまず旧東海道を目指すので、ここが今回のゴールとなる予定。まずは、




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 この歩道橋で現国道1号線を渡る。上下線合わせて4車線の、日本の大動脈の内の一本であるから、それを跨ぐ歩道橋もこの規模である。車両用の陸橋も一緒に架かっているので、車で「昭和第一トンネル」等を目指すひともここを渡ることになる。




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 で、私は進路を間違えてその車道の方を渡ってしまった。朝早く車は1台も来なかったから良かったものの、昼間ならとても危ないことになっていた。スミマセン。……とかいいつつ、陸橋の上から最新の2ルートを撮影。手前が平成十年(1998年)開通の「平成トンネル」、奥が昭和三十二年(1934年)開通の「昭和第二トンネル」。まあ、特に何ということもないトンネルだが、地元の人間にとっては大切な「現役ルート」であり、特に「平成トンネル」は、かつての慢性的渋滞を解消してくれた有り難いトンネルである。




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 歩道橋を渡ると、県道が谷間に続く。季節の花に心慰めつつ。




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 この分かれ道を左へ。




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 宇津ノ谷の集落。ここに来るのも三度目だ(笑) ここが旧東海道。



 
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 一軒一軒に屋号の看板がある。




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 集落の真ん中辺りにある、「御羽織屋」さん。ここには何と、豊臣秀吉がこのお宅のご先祖に贈ったという羽織が今も保存されているという。

 天正十八年(1590年)、豊臣秀吉は小田原の北条氏を攻め、結果として北条氏は降伏し、戦国大名としての北条氏の勢力はここで潰えた訳であるが、その小田原攻めの途上、秀吉はこの御羽織屋さんで休息、その時のご主人のもてなしをよろこび、小田原からの帰途に再び立ち寄って、羽織を贈ったのだ、という。このこと自体も無論非常に面白いのだが、私の興味は、豊臣勢の大軍がこの宇津ノ谷峠を越えたときに起こった、東海道の変化、である。

 『伊勢物語』の時代には、「蔦の細道」の方を通っていた東海道であるが、この豊臣勢の大軍が東へ侵攻するにあたり、道が細すぎるということで新しい峠越えの道を整備、それがそれ以降の東海道となったのである。即ち、戦国時代の終焉を告げるような歴史的出来事が、道というものに変化を与えた顕著な事例といえる訳で、これは実に興味深い。

 道というものが、太古の、自然発生的に産まれ、そしてその環境や通行者の変化などに伴ってしだいに変容していくものから、大きな権力のもと、その権力の都合によって変化「させられる」ものへと移り変わった訳で、それはいってみれば「公共事業」としての性格が強まった、ということである。

 古代から中世、そして近世を経て現代へ、という時代変換に伴って、道路の規模が次第に大きくなる様子は、この宇津ノ谷峠においてよく観察できるのであるが、それは、次第に道が「人工的」になっていくことを同時に意味するのであろう。

 



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 道は階段になる。前回はカブで来たので車道を迂回したが、今回は真直ぐに旧東海道をそのまま進む。




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 階段を登りきったところで振り返る。ここから、




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 左方向へ行くと、「明治のトンネル」。今回はそちらにはいかないけれども、以前に行ったときに撮った写真を、ご参考までに。




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 こんな感じ。日本で最初の「有料道路」だそうだ。




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 今回はこちらへ進む。先ほどの階段を登りきったところから、右に少しいったところにある、峠越えの道の登り口である。




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 御覧の通りのまるきりの山道。




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 タケノコ。タケノコがあるということは、




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 竹林がある。この辺り、往時の雰囲気を感じるようで、歩いていて心地よい。




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 遠くからみて、百合にみえたが、違った。例によって遅筆の為に時間差があるが、このハイキングをしたのは実はゴールデンウィーク前であるから、さすがに百合には時期が早すぎる。これは、何だ?




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 これは「雁山の墓」。享保十二年(1727年)頃、俳人雁山が旅に出たまま音信不通になったために、旅先で亡くなったと思った駿河の文人達が、この墓碑をたてた。しかし雁山は生きており、『有度日記』や『駿河百韻』などを著した後に、明和四年(1767年)、甲府で亡くなった、とのこと。生きているのに勝手にここにお墓を建てられてしまった雁山、駿河に縁の深い俳人だというが、その後はなんだか駿河に来にくくなっちゃったんじゃないかと、ちょっと心配になった。




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 その先にあるのが、『峠の地蔵堂跡の石垣』。この石垣の上にかつては延命地蔵堂があった。




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 苔むして、なにやら古代文明の遺跡のような雰囲気があるが、時代としては江戸時代中期のもの。




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 石垣の上には、地蔵堂の礎石がわずかに残る。

 峠の地蔵堂、というくらいなので、峠はもうすぐ、ということ。




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 ほら、見えてきた。峠である。スタート地点の道の駅から約30分。思ったよりも早く着いたし、体力的にもまだまだ余裕があり、よし、これは大丈夫そうだぞと、自分の足に自信をもったところで、次回に続く。
 


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