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乱読乱文多謝 静岡史跡探訪ver.

スーパーカブと、史跡と、ときどき読書感想文

聖なる恋歌 —旧約聖書

 
 『雅歌』は、初めて旧約聖書という書物に触れようというものを、間違いなく驚かせるであろう内容をもつ。

 これは聖典である。神と、世界と、人間とについて、説明し、規定する、絶対の存在としての書物であり、信徒は、これに異議を唱えることは許されない。そんな書物であるはずの旧約聖書に、あろうことか恋愛詩が挟まっているのである。それも、あからさまな表現をもった、官能的とさえいえるような相聞歌、つまり恋人たちの甘い語らいをそのまま歌にしてしまったような代物なのである。

 無論私も、初めて読んだときには驚いたのだったが、それよりも、ある一行から得た印象が、深く心に残った。



  我はカロンの薔薇、谷間の百合。
  (2−1)


 誰も知ることのない、ただ風が草木を揺らすばかりの、とこしえの静寂に包まれた谷に一輪、奇跡のように咲く白百合。私はそんな景色を思い浮かべたのだったが、ふと、ある想いに、詩句を読みすすめようとする視線を留めた。

 もし、本当に誰の眼にもとまることのないままに、咲き、散っていくのならば、その百合の美しさとは、一体なんだろうか。その花が美しくあることに、なにか意味があるのだろうか。いや、もっといってしまうならば、その花の美しさなるものが、この世にたしかに「在った」のだと、果たしていえるのだろうか。……

 何らかの深い考えののもとにそんなことを思った訳でもなく、また、そこから直ちに深い考えに移った訳でもなかった。ただ、ふっとよぎった想いにすぎなかった。しかし当時十代の後半にあった私が、やがて主観主義的な世界観に傾倒していく、これはそのきっかけとなる出来事だったのかもしれない。

 今回の「人生を凌ぐ一行」が読める本。



聖書 - 新共同訳聖書 - 新共同訳
(1996/10)
共同訳聖書実行委員会

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 いろんなところから、いろんな版が出ているなかの、ほんの一例(私は口語訳、文語訳と二冊持っていますが、そのどちらもこれとは違います)。あるいは今回の「一行」からは、こんなものを思い浮かべるひとも少なくはあるまい。



谷間のゆり (岩波文庫)谷間のゆり (岩波文庫)
(1994/12/16)
バルザック

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 バルザックの長編。年上の女性が好きなひとにはおすすめ。かくいう私もかつては「年上好き」であり、年下の女性はちょっと、なんていっていたのだったが、結局、結婚したのは十歳も年下の今の嫁さんであった。わからんものだね(笑)。
 
 

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